- TOP
建築
NUMBER
20
TITLE
建築
食をはぐくみ、ひとが賑わう、茅葺のパビリオン

建築は、全国から集められた茅を使って大きな茅葺き屋根を象徴として作りました。茅は里山の暮らしにおいて、人の営みと自然との「循環」の象徴でもあります。万博終了後には再利用も検討しています。また、複数の屋根の集積は市場のように食に集う人の賑わいをコンセプトとしています。デザインは隈研吾建築都市設計事務所の若手建築デザイナーから募集を行い、多種多様な50近いアイデアの中から幾つかの要素を組み合わせて決定しました。
使用した茅の5産地

熊本県阿蘇市
阿蘇の草原は、放牧・採草・火入れなどの伝統的管理によって維持されています。その歴史は古く1.3万年ほど前からとして草原は暮らしに必要な場所でしたが、化学肥料やトラクターの普及によって半減しました。しかし、今でも1.4万haほどの草原が経済面や環境面から維持されています。
静岡県御殿場市
御殿場の茅場は、富士山麓の標高500m~1,000mにかけて4,000ha以上に渡り広がる本州最大のススキの草原で、江戸時代から300年以上続いています。毎年2月に野焼き、春から秋は山野草の採取、12月から2月に茅刈りが行われています。冷涼多雨な気候によって、2m以上に成長する御殿場の茅は、手刈り手法で刈り取られ、全国に出荷されています。
大阪府大阪市淀川区
淀川のヨシは、現在3つのヨシ原が残っており、京都伏見、高槻鵜殿、大阪十三干潟と呼ばれています。この内、伏見と十三で現在もヨシの採取が行なわれています。十三のヨシは細く短く1.5~3m、伏見のヨシは長く3~4mに達します。古くから生活に関わっており、伏見においては石田三成、十三では聖徳太子縁であると伝えられています。
滋賀県近江八幡市円山町
円山は、滋賀県近江八幡市の湖に隣接し、16世紀頃から収穫されていました。円山のヨシは艶があり綺麗という特徴を活かし、茅葺屋根だけではなく、葭簀(よしず)や葭戸(よしど)といった調度品に使われてきました。今はこれらに加え、琵琶湖よし笛やヨシストランドボードなども開発され、新たなヨシ産業を興す取り組みが行われています。
岡山県真庭市蒜山高原
蒜山は、800年ほど前から毎年春に山焼きが行われ、田畑への緑肥や、茅葺屋根や雪囲いの材料として利用されてきました。今回使用した蒜山産の茅は、「蒜山茅刈出荷組合」の他、ボランティアや地元中高生のみなさまに収穫いただいたもの含みます。組合は農閑期の副業として、茅販売で得た利益を組合員に還元しています。
建築意匠監修:隈研吾建築都市設計事務所 隈研吾
茅提供協力地域:熊本県阿蘇市、静岡県御殿場市、大阪府大阪市淀川区、滋賀県近江八幡円山町、岡山県真庭市蒜山高原
茅葺職人:沖元太一、相良育弥、樋口祐二、植田龍雄、山中 和、阿部洋平、小西稀一、塚本留加、高橋花歩、川畑太輝、久保田健介、植田龍貴、太田聖人