- TOP
- EARTH FOODS
EARTH FOODS 25 料理
NUMBER
17-03
TITLE
EARTH FOODS 25 料理

アースフードとは地球のみんなの財産です。
日本で親しまれる食材を世界に共有するため、新しくて美味しい食べ方を提案。
5名の料理人が、既存のジャンルやスタイルを飛び越えて考えたコンセプト料理です。
「EARTH FOODS 25」を使い、料理を通して未来へ向かう新しい価値を提案するため、豊かな創造力と個性あふれる料理人5名を起用しました。
既存のジャンルやスタイルを飛び越えて、料理を通して未来へ向かう新しい価値を提案できる料理人として、個性あふれる気鋭の料理人5名を選定。この料理人5名が共創し、1名につき5つの食材を担当して合計25皿の新しいコンセプト料理を開発しました。
参加料理人
リオネル・ベカ(ESqUISSE エグゼクティブシェフ)
サンティアゴ・フェルナンデス(MAZ ヘッドシェフ)
石坂 秀威(SEA VEGETABLE 料理開発担当/シェフ)
加藤 峰子(FARO シェフパティシエ)
桑木野 恵子(里山十帖 料理長)
リオネル・ベカ Lionel Beccat / ESqUISSE エグゼクティブ シェフ

フランス、コルシカ生まれ。「メゾン・トロワグロ」でスーシェフを務めた後、2006年「キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ」のシェフとして来日。2012年、ESqUISSEエグゼクティブシェフに就任。ミシュランガイド東京2013より継続して二つ星の評価を受ける。2021年、「エスキスの料理 インスピレーションから創造する料理の考え方」を発刊する。フランスの技術と伝統に根ざしながら日本の食材と文化に発想された独創的な料理は先進的で味わい深い。> ESqUISSE HP |

[ 14. 椎茸 ]
森の声
木の芽風味 発酵椎茸水ゼリーで固めた椎茸のテリーヌ、山葡萄、醤油粕、クロモジ
24億年前に海洋で誕生したキノコは、寄生生物であり、森の共生パートナーであり、リサイクル業者である。彼らがいなければ、植物の残骸は地上に堆積し、二酸化炭素は大気中から消滅し、生命は途絶えるだろう。言ってみればキノコは地球再生の強い味方 。キノコがあることはその土が健全であることを意味する。土地のDNAを受け継ぎ、自然界の命のサイクルを作るキノコを通して、かつて狩猟民族だった我々の祖先とつながろう。

[ 18. 寒天 ]
見守る海
牡蠣水寒天ゼリー、もずくの天然藍色
海藻は水を濾過するだけでなく、光エネルギーを有機化合物に変換し、光合成により酸素を放出して水生生物の呼吸を担保する。食物連鎖の最初の輪として多くの生命を育む海藻は今、人間の活動から直接的な影響を受けている。我々は最大限の配慮と敬意をもって海藻と向き合うべきである。この青いゼリーは、牡蠣に含まれる海水にさまざまな海藻を混ぜたことで生まれた。海藻がいかに美しく、儚く、尊い存在であるかを感じて欲しい。

[ 19. ふぐ ]
高潔な魚
フグの花仕立て、炭火で焼いたヒレと骨のコンソメ、大根で巻いた皮、イチジクの葉味噌
毒があることを除けば、ふぐは日本以外ではほとんど知られていない魚だ。我々人類は今後、海の生態系から天然の資源を獲り尽くしながら地球上で生き続けることはできない。海の資源を再生させるためには、高潔な責任ある取り組みとして、海上養殖を増やす必要がある。ふぐは養殖に適し、並外れた栄養価を持っている。可食部が多く、皮も身もおいしく食べることができることから、今後海洋資源として特別な選択肢になるだろう。

[ 20. すり身 ]
歴史の輪
ホタテ、白身魚、イカ、酒粕のテリーヌ、豆乳とガルムのソース
日本人が考案したすり身は当初、網にかかった雑魚を無駄にせず、健康志向にマッチした価値ある商品に変換するという徳のあるアプローチだった。しかしすり身はその後世界中で大量に消費されるようになり、漁業における乱獲のシンボルとなってしまった。絶滅危機に瀕していない魚介類(持続可能な資源)ですり身を作り、その美しい側面を強調することで歴史を振り返り、すり身誕生の本来の意味を取り戻したい。

[ 21. 鰹節 ]
芳しい水
温泉水に野菜と鰹節を24時間浸したスープ、その野菜の軽いフライ
かつて栄養素は1gでも尊いものだった。いかに食物を蓄え、栄養を引き出すかは世界の料理文化に共通する命題だ。料理はおいしい悦び以前に命をつなぐ行為なのだ。水は「保持と拡散」という相反する作用によって調理の中心にある。この芳しい水は、火力を使わず常温で作った。何も捨てずにすべてを使い切り、素材の栄養素とカロリー、おいしさを引き出せれば、CO2排出を最小限に抑えながら味わいを享受することができるだろう。
サンティアゴ・フェルナンデス Santiago Fernandez / MAZ ヘッドシェフ

ベネズエラ生まれ。スペインの4年制料理専門大学「バスク・クリナリーセンター」でガストロノミー・料理学の学士号を取得後、ペルーのレストラン「CENTRAL」に加わり、5年間クリエイティブプログラムを担当。2022年日本に移り、「MAZ」のヘッドシェフに就任。そこで日本の旬の食材を使いながらCENTRALの哲学をさらに発展させ、複雑さと深みを加えた。2023年、ミシュラン東京にて最年少で2つ星を獲得。また、MAZはアジアのベストレストラン100、日本のトップ5ベジタブルレストランにも選ばれている。> MAZ HP |

[ 7. わさび ]
岩礁 ワサビ – 干しホタテ – ムール貝
マセレーション(醸し)
多様な生態系を持つペルーと日本には、様々な保存食があふれている。海から山へと広がる自然の中で、サンゴ礁にインスピレーションを得た料理に、日本の「わさび漬け」を組み合わせた。「わさび漬け」は、わさびのすべての部分を酒粕に漬けることで、わさびを保存するだけでなく、その葉や茎も無駄なく活用される。ペルーからは海産物の天日干しの保存技術を取り入れ、ホタテの天日干しを使った。

[ 4. 高野豆腐 ]
極端な高地 高野豆腐 – チューニョ – チョクロ
フリーズドライ
アンデスの高地では食料の収穫期が短く、天候は不安定で出来具合も予測がつかないため、保存技術が食文化の柱となっている。アンデス最古の保存食の一つ「チューニョ」は、厳しい自然環境下で凍結乾燥されたジャガイモであり、この料理では「チューニョ」を様々な食感で使用。そこにセコソース(ハーブや唐辛子を使ったペルーの伝統的ソース)を吸わせた、日本の伝統的な保存食「高野豆腐」を組み合わせた。

[ 6. 大根 ]
アンデスの裾野 凍み大根 – 乾燥塩漬けハツ – パンカチリ
乾燥
乾燥は、太陽や気候を利用した食料保存方法の一つ。アンデスの伝統的な保存食「チャルキ」は肉(特にアルパカ)を30日間、太陽の下で乾燥させて保存する。風や寒さのおかげで肉は腐らず、5年後でも食用できる。日本にも冬の寒さと太陽を利用して大根を乾燥させた「凍み大根」がある。ペルーと日本の両方の技術を組み合わせ、凍み大根のしっかりとした食感に、チャルギの豊かな肉の風味を加えて仕上げた。

[ 13. 梅干し ]
ハイジャングル 梅干し – チチャデホラ – アサイー
保存
梅干しは、日本で最も有名な保存食の一つ。ここでは、ペルーでよく使われる保存技術のアルコール発酵と組み合わせて使用。具体的には「ホラコーン」という品種のトウモロコシを4日間発酵させ、料理や飲み物に使われる「チチャ」または「チチャ・デ・ホラ」と呼ばれるアルコール飲料を作る。チチャの味と梅干しに多くの類似点があるため、組み合わせてデザートに仕上げた。

[ 16. わかめ ]
海霧 ワカメ – タコの卵 – スピルリナ
塩
塩蔵は、古代から食べ物を保存する簡単で効果的な方法であり、日本とペルーどちらも塩を使った保存を伝統的に活用してきた。この料理では、塩蔵したわかめやタコの卵を使用。タコの卵は普段捨てられることが多いが、そのような見過ごされてきた食材を使用していくことも大切である。また、海藻は自然の生態系を壊さずに持続可能な形で栽培できる可能性が大きい、未来への可能性を秘めた食材である。
石坂 秀威 ISHIZAKA Shui / SEA VEGETABLE 料理開発担当/シェフ

シドニー出身。オーストラリアのU30の料理コンテストで優勝後、2018年東京にオープンしてからわずか1年で2つ星を獲得した「INUA」でスーシェフとして料理開発を担当。その後「シーベジタブル」と出会い、これまでに社内のテストキッチンで100種類以上の海藻と向き合いながら、料理業界でも知られていない海藻の食材としての可能性を発信してきた。また、京都で開かれた「noma」のポップアップレストランに料理開発担当として参画。> SEA VEGETABLE HP |

[ 3. 豆乳 ]
生アーモンド、生あおさ、黒トリュフの生湯葉包み 青のり豆乳タレ
豆乳を使った加工品は数多く存在します。昔から、精進料理などで豆乳を活かした料理がたくさん作られてきましたが、伝統的な調理法がありながらもまだまだ面白い使い方の可能性が残されていると感じています。豆乳から作られる湯葉は、包む料理に適しており、味が繊細であっさりとしていて癖がないため、様々な食材と組み合わせることが可能です。今回は、特徴的な味や香りを持つ食材と合わせて仕上げました。

[ 15. 昆布 ]
一年生昆布の黒糖シロップ漬け 昆布アイスクリーム ドライチェリーと桜のスポンジケーキ
世の中に流通している昆布の大半は、2年間成長させた乾燥昆布です。しかし、昆布は乾燥加工される前の状態でも、素晴らしい食材としての可能性を秘めています。今回のデザートに使用した昆布は、若く柔らかいことが特徴で、味わいもあっさりとしているため、デザートに取り入れました。

[ 17. のり ]
アマノリ、カカオバタークリームとベルガモットのミルフィーユ
一般的に海苔といえば、乾燥した黒いシート状のものを指しますが、実は、「アマノリ」という小さな海藻が無数に集まって作られています。乾燥したアマノリは、フライパンや直火で軽く炙ることで、独特の風味と香りが一層引き立ちます。トーストすると、海苔は驚くほどカリカリになります。ミルフィーユが何層にも重ねたパイ生地を使ったデザートの代表格であるように、焼いた海苔のサクサク感を活かした一品を考えました。

[ 22. 麹・種麹 ]
麦麹、松茸、ヘーゼルナッツ 味噌クリスプのせ
麹は、日本の食文化において欠かせない食材の一つです。醤油、酒、味噌など、日本を代表する発酵食品には必ず使われています。今回は、麹を単なる原料としてではなく、麹そのものの美味しさを表現する一品を考案しました。米ではなく、旨味の深い大麦を使用し、発酵によるフルーティーな味わいを引き立たせた麹を生ハムのように薄く切り、滑らかな口触りに仕上げました。

[ 24. みそ ]
豆腐の味噌漬けアイスクリーム
豆腐の味噌漬けは、豆腐特有の滑らかさを残しつつ、味噌の旨味をしっかりと取り込んだ、とても興味深い食材です。意外な甘さがあるため、今回はデザートとして使用しました。味噌と貴醸酒は、どちらも発酵によって独特な甘味とキャラメルのような熟成香を持ちます。クリーミーなアイスクリームに空気を含ませて、リッチで深みのある、香りを引き立てました。その上にゆずのフレッシュな香りでコントラストをつけました。
加藤 峰子 KATO Mineko / FARO シェフパティシエ

東京都生まれ。デザイン、美術、現代アートやモノづくりに興味を持ち、食の分野からパン・お菓子の道を選び進む。約 10年間、「イル ルオゴ ディ アイモ エ ナディア」「イル・マルケジーノ」「マンダリンオリエンタルミラノ」(ミラノ)、「オステリア・フランチェスカーナ」(モデナ)など、イタリアの名立たるミシュラン星獲得店にてペイストリーシェフを勤める。「エノテカ・ピンキオーリ」(フィレンツェ)のチョコレート部門を経験。「ファロ」では、旅するように“特別な体験として脳裏に残るようなレストラン”を目指し、日本の自然や和のハーブをリスペクトしたデザートを提案。自家製酵母など原材料からこだわりメニュー開発に取り組む。> FARO HP |

[ 1. 米粉 ]
米の未来
日本が誇る滋賀、琵琶湖から来た自然農の魚のゆりかご米を石臼で挽いて全てを米で作ったデザート
温もりのある日の光が、枯れかけた庭の草木を労うかのように透明な冬の明るさとともに照らしている。その芯から明るい光は、冬景色の中ではまるで遠いどこかの国の映像のようにキラキラと輝いている。米と地球温暖化の関係性から、生態系を守りつつ、美しく環境にやさしくも素晴らしいお米を作る生産者の米を石臼で挽いて全てを米で作ったデザート。

[ 5. あんこ ]加藤峰子×濱田浩二
檜菊(ひのきぎく)
白小豆の餡でできた練り切り、薔薇と檜の豊潤な香りのソース
秋の黄昏時、迸る香りと色に身を委ねながら、いっとき全てを忘れよう。ほんのり色ずく感情の芽吹きを待ちながら。奈良県吉野の檜の高貴な香りを纏った白小豆の餡でできた練り切りを、香川県の和菓子職人 濱田浩二氏(夢菓房たから)がハサミ切りで菊を表現したお菓子に。そして、島根県奥出雲の深い自然の中で大切に育てられた薔薇の豊潤な香りに、檜を合わせたソースを注いだ瞬間、紅く美しく華開く。

[ 11. 抹茶 ]
苔のむすまで
オーガニック抹茶のケーキクラムを纏った苔玉の形のチョコレートケーキ
ひんやりした檜の森の中、苔滑らかに冷たく清まった苔のビロードが心まで艶やかに撫でてくれる。色砂を撒いたような色彩の中で、心沈め森を想う。京都の永田茶園オーガニック抹茶のケーキクラムを纏った、苔玉の形のチョコレートケーキ。チョコレートはボリビアの野生のカカオを使った、生態系に優しい100年後を見据えた本当の優しさの塊のケーキ。

[ 12. 香酸かんきつ ] 加藤峰子×金谷亘
橘の花の香
日本最古の柑橘「橘(たちばな)」の果実と花の香を閉じ込めた錦玉羹
瑞々しい錦玉製のお菓子は冷たくひんやりと清々しい。センシュアルな食感と口内と脳裏に広がる香りに身を委ねる瞬間、はるか昔に存在していた寺院を思わせるような高貴な香りが漂い、自分の中に透明な何かが生まれてくる。準絶滅危惧種の日本最古の柑橘「橘(たちばな)」の果実と花の香を閉じ込めた錦玉羹を、京都の老舗「京菓子司 金谷正廣」の金谷 亘氏が制作。橘の果実と葉のソースで仕上げたデザート。

[ 23. 日本酒・本みりん ]
漆黒とひとりの宴
琥珀糖、 能登の新酒、香木の伽羅、レモンの香りの漆黒のデザート
眠れない夜、部屋の灯りを少し落として過去に想いを馳せてみようか、それとも未知の世界に踏み入れてみようか。迷っている間にひとりで宴をあげよう。虫の声や鐘の音が懐かしいが、憧れだった昔のプレイリストでも流しながら。和菓子の琥珀糖という技術、 能登の全壊した酒蔵 数馬酒造で救出されたもろみでできた新酒を使い、香木の伽羅や無農薬の和歌山のレモンで香りづけした「漆黒のデザート」。
桑木野 恵子 KUWAKINO Keiko / 里山十帖 料理長

埼玉県出身。「里山十帖」料理長。オーストラリア、インドなど世界各地を巡りアーユルヴェーダの哲学や食、ハーブ、スパイスについて学ぶ。地に根付く食文化・風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、「ローカル ガストロノミー」を料理に表現。2020年「ミシュランガイド新潟 2020 特別版」で一つ星を獲得。ゴ・エ・ミヨ 2022年「テロワール賞」、2023年・2024年野菜のレストランガイド「We’re smart green guide」にて2年連続で世界13位、2023年Best Lady Vegetable chefs 授賞。> 里山十帖 HP |

[ 2. 餅 ]
毒と官能
栃の実、山菜、山栗、キノコ。山の恵みの雑煮
日本の山間地では昔から正月に「栃餅」を食べる習慣があった。餅米をつき、栃の実を混ぜる。栃の実には毒が含まれているため、途方もない労力をかけて食用にする。これを正月料理の雑煮を継承という観点から再構築した。春に保存しておいた山菜、秋に採れた山栗とキノコを入れ、出汁はクロモジやネズの木から取った。味は複雑で官能的。縄文時代は主食だったと言われる栃の実、縄文人もその官能的な味覚を知っていたに違いない。

[ 8. 山椒 ]
スパイス
山椒の葉、花、実、枝。縄文時代から学ぶ野菜の蒸し焼き
縄文時代の代表的な調理方法「蒸し焼き」による料理。地面に穴を掘り、火を焚いて石を熱する。その上にマリネした野菜を乗せ、山椒の木の枝を被せて、じっくり山椒の香りを移しながら焼き上げると、驚くほど味は複雑で天然の旨味と香りが凝縮する。蒸し焼きと山椒の相性は抜群にいい。山椒は縄文時代から料理に使われていたことがわかっており、おそらく5000年以上前から日本の食に欠かせないスパイスであったに違いない。

[ 9. かんぴょう ]
出汁
乾物の旨味とかんぴょうの出汁、焚いたヘチマとトウガン
江戸前寿司の締めは「かんぴょう巻き」が定番。乾燥させた野菜に限らず、乾物を水で戻すと良い出汁が取れるが、干瓢や切り干し大根などを戻した水(出汁)は捨てられることが多い。その出汁と戻した干瓢をミキサーでペースト状にし、冷凍してから解凍し、ゆっくり布で漉すことで澄んだ出汁ができる。焚いた野菜はヘチマとトウガン。田舎料理のようでありながら、味は洗練されている。知らなければ何の出汁か分からないだろう。

[ 10. こんにゃく ]
毒と毒
先人の叡智。こんにゃくとふぐの卵巣の3年糠漬け
いかにも毒草らしい模様のこんにゃくの茎だが、藁灰を濾した汁と合わせると毒が消え、こんにゃく芋本来の味が引き出される。そんな先人の叡智に敬意を表した料理で、味付けにふぐの卵巣を使った。ふぐの卵巣は3年間糠漬けにすると微生物により無毒化される。これを酒に浸し、出汁として使い、エスプーマに仕立てた。知恵により毒が無毒になり、美味しさに変わる。料理人はそれを拝借し少しだけ新しい味を生み出しているに過ぎない。

[ 25. 野菜の漬物 ]
本物と偽物
甘味、酸味、苦味、辛味、発酵による旨味の漬物と野菜
新鮮な野菜と、人間の知恵による「漬物」を組み合わせたシンプルな一皿。いわゆる調味料を使わず、漬物を調味料に見たてて味を組み立てている。同じ漬物であっても、時間の経過とともに味が変化していくので、表現できる味の幅は無限大である。残念ながら近年、日本の家庭で当たり前に作られていた漬物が消えつつあり、代わりに「漬物風」の偽物が小売店に並ぶ。日本各地の伝統的漬物が後世に伝えられることを祈るばかりである。