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進化する冷凍食
NUMBER
14
TITLE
進化する冷凍食

あらゆる食材を凍結粉砕してパウダー化。
それは食の新たな可能性を広げてゆく。
冷凍食品が一般的になってから半世紀以上。現在、その技術は大きく進歩して、ただ便利というだけではなく食材ロスや飢餓の問題を解決しながら、美味しくて新しい食べ物を生み出しはじめています。この展示は、その先にある大きな可能性のひとつです。
ここでは、様々な食材を凍結粉砕することで作られた、長期保存することのできるパウダーを展示しています。さらに、そのパウダーをベースにお米の形に再成形したり、料理に転用することで、新しい価値を持つ未来の食品の可能性を提示しています。他の食材から作られた米型の食品は、山形大学・古川英光教授率いる研究室と株式会社ニチレイフーズの共創によって実験的に開発されました。

様々な食材を凍結粉砕することで作られた、長期保存できるパウダー

野菜、お肉、お魚、果物、調味料、未利用の食材…。-196℃で凍結粉砕することにより、食材は10年単位で風味や栄養を保持したまま保存できるパウダー食材に変わります。進化する冷凍食売り場には、実際にパウダー化した食材を24種揃えています。にんじんや鶏肉といったお馴染みの食材から、生産の過程で廃棄されてしまうロスフラワーや、一般的には口にすることの少ない樹皮やウニの殻などの未利用資源など、いまは食材としてメジャーなものでなくても、パウダーにすることで新しいおいしさを生み出す可能性があるものも。
米×パウダー食材を再び米形に。新しい主食「再生米」

-196℃の凍結粉砕によるパウダー食材と、お米のパウダーを再びお米の形に成形した新しいお米「再生米」のプロトタイプは、EARTH MART×ニチレイフーズ× 山形大学古川研究室の共創によって生み出されました。さまざまな食材を米形にすることで、栄養の摂り方を変え、未利用の食材のおいしさや栄養を生かし、調理をより手軽にしたり、これまでにないおいしさを生み出したり…再生米はわたしたちの暮らしにあるお米の価値を超え、新しい食習慣や食文化を生み出していく可能性を秘めているかもしれません。
プロジェクトのメンバー、山形大学の古川英光教授は、再生米についてこう語ります。

「再生米、おもしろいですよね。お米って、小麦などよりもアミノ酸のスコアが高くて、ちょっと栄養を補給すれば、しっかりタンパク質源にもなるすごくいい食べものだと思うんです。なんと言っても日本人の主食で、食文化の中心にあるもの、とも言えますしね。破砕米が凍結粉砕された食材と出会って再びお米の形になることで、足りない機能を補ったり、新しい味や価値が付加されたり…きっと、新しい食文化の形成につながるんじゃないかと思います。これができたことで、もっと栄養価の高いものを作れないかとか、おいしいものが作れないか、と発想が広がるきっかけになるといいですね。無限の可能性があるように思います。
EARTH MARTの展示を拝見し、「いただきます」という言葉の奥深さに心を打たれました。未利用食材が凍結粉砕ゲル粉末として新たな命を得て、3Dフードプリンターで再び美味しくよみがえる——そんな未来の食卓の可能性が、やさしく、けれど確かに伝わってきました。こうした技術は、目立たずとも安全と安心を支えていく“縁の下の力持ち”のような存在ですが、今回の展示ではその力が少し顔をのぞかせ、未来の食文化を語りかけているようでした。未来の「粉もん」や「再生米」に、ぜひ多くの方が好奇心を抱いていただければ嬉しいです。
余談ですが私はおにぎりが大好物なので、行き着くべくして「お米」にたどり着いたのかなあ、とも思いますね(笑)次はEARTH FOODS 25を凍結粉砕して活用してみたいです!」
パウダー化した食材が予感させる「冷凍食品の未来」
凍結粉砕と再成形が当たり前になるかもしれない未来。冷凍食品はどう進化するのか?そのありえるかもしれない未来を、私たちがよく知る「架空の冷凍食品」の形で表現しています。

【大人のためのタコさんウインナー】
見た目はタコさんウインナーだけど、ゆで蛸の味。タコの粉末を使い、あえて子供が好きなタコさんウインナー型に。リアルなタコを味わえる「おとなのためのタコさんウインナー」。再成形しているので、本物のタコより噛み切りやすい。噛む力が弱くなったお年寄りでも、おいしく食べられる。
【魚へんのパスタ】
魚の骨や皮などもまるごと粉砕、100パーセントお魚でできたパスタに。さらに、食べることが楽しくなる魚と漢字を組み合わせた形に成形してある。子供たちが魚の味と文字を学びながら食事を楽しめる知育パスタ。
【いくらみたいなたまご】
美しい見た目とプチプチの食感で愛される魚卵・「いくら」。いくらのようなサイズと食感・見た目で、ほかの卵を食べることができたら?新食感・新感覚の「いくらみたいなたまご」のシリーズ。という設定で、飼料にかかる負担が少ない「ダチョウの卵」がいくらサイズになっている。
【いのちまるごとブイヨン】
農業と野生鳥獣との共存を探る中で、日本ではジビエの活用が課題になっている。それらジビエを凍結粉砕によって余すことなく味わえるブイヨンに。なじみのないジビエも簡単に調理に取り入れ、さらに日常の料理をおいしく進化させることにつながる。
【世界に運べる魚にぎり】
とれたての魚を新鮮なまま加工、凍結粉砕して、再生米のおにぎりに。遠くの国や、海のない地域でも魚のおいしさや携帯食としてのおにぎりという食文化を味わえるようになるかもしれない。
【オールイン麺】
見た目は具のない素ラーメンだが、麺自体に具が練り込まれている。チャーシュー、しなちく、ネギ、なると、海苔が練り込まれていて、麺を1本食べるだけでもラーメンの味が完成する。同じ考え方で「オールイン麺」のシリーズがあるという設定。EARTHMARTに並んだのは、醤油ラーメン。
【おいしい “お好まない” 焼き】
子供たちが「好まない」野菜をふんだんに練り込んだお好み焼き。見た目は一般的なお好み焼き、味もお好み焼き。おいしく「好まない」ものたちを摂取できる。
【親子丼サンドイッチ】
見た目は卵のサンドイッチ。パンが鶏肉の粉末からできており、親子丼の味わいをサンドイッチから楽しめる。片手で食べられる丼の味として、昼食や軽食の新定番になるかも。
【本当のたい焼き】
見た目は普通の鯛焼きだが、鯛のパウダーを小麦粉のように活用して作った、本物の鯛による鯛焼き。中には出汁で炊かれたご飯が入っており、食べるとたい焼きなのに鯛めしを味わえる。
Collaboration
技術協力 : 古川英光(山形大学 古川英光研究室) / 株式会社ニチレイフーズ